食への利用

落花生の食への利用

落花生の味というと、煎り上がった時の独特の風味(香気)ですね。この香気の成分については、これまで多くの研究がなされており、300を越える化合物が見いだされています。香気成分の主なものは、ピラジン類、チアゾール類、オキサゾール類、カルボニル化合物で、これらの香気成分の多くは生豆中には微量もしくは全く存在しないもので、焙煎することによって生じます。

落花生はこの風味を生かすため、煎り豆・バタピー(バターピーナッツ)などの嗜好品や菓子類、あるいはピーナッツバターとして主に加工・利用されています。

落花生を使った料理には、落花生味噌、煮豆、和え物、味噌汁、落花生豆腐などの他、煎り豆を刻んだり粉末にして料理に加えたり、郷土料理的な色彩が強くあります。なお、これらの料理は調理・加工品としての流通が多く、他のマメ類に比べて、一般家庭での料理や菓子の食材として落花生が利用されることはほとんどありません。

この理由は、日本では落花生の栽培の歴史が浅く、また生の落花生が大豆や小豆などのように広く小売りされることは少なく、産地の販売店などに限られることが原因と考えられます。また、落花生油は中華料理などではよく利用されますが、一般的には馴染みがありません。

なお、これまでは落花生の産地に限られていた堀たての塩茹で落花生が、冷凍流通やレトルト加工されることにより各地で通年食べられるようになるなど、落花生の新しい調理方法や流通形態の検討がなされています。


むき実・選別

以前は農家がむき実(豆)を出荷しており、「手むき」といって莢を割って豆を取り出すことは手間のかかる作業で、女性の夜なべ仕事の一つでした。現在では莢のまま出荷され、加工業者が機械を使ってむき実にしていますが、昔の手むきの良さを懐かしむ業者も多くあります。

煎り豆にする場合、豆がそのまま商品となるため、割れたものや小粒のもの、品質の悪いものなどを選別します。ふるい落とされたものは製菓原料や刻み・粉末などに回されます。


煎り莢

加工業者が農家から買い入れた落花生のうち、比較的莢のきれいなものを莢煎りに用います。水洗いした後乾燥させ、下莢などを取り除いてから煎りますが、中には水洗いせずに煎ることもあります。なぜなら、落花生本来の味があり、吸湿による変質も少なくて済むからです。

煎り機には回転式のものと平型のものがあります。火力は普通ガスが用いられます。一度に煎る量は60kg程度で、40〜50分かけて煎りあげます。火を止める時がポイントになり、煎りが強いか弱いかは、この時の微妙なタイミングによるもので長年の経験に支えられており、業者によって異なります。煎り機から出された落花生はまだ熱を持っているため、風を送るなどして温度を下げ、袋詰めされます。


煎り豆

煎り豆には、そのまま煎る「素煎り」と、塩水に漬けてから煎る「味付け」の2種類があります。「素煎り」は落花生独特の風味がありますが、塩味のついた方が好まれるようで、煎り豆では「味付け」で加工されるものが多いです。煎り莢・バタピーとともに贈答品には欠かせないものであります。


バターピーナッツ(バタピー)

最初はバターを使って揚げたのでこの名前がついたといわれていますが、現在はヤシ油などの硬化油が用いられています。種皮を除いた落花生を網籠に入れて、約150℃に熱した油で淡褐色になるまで揚げます。油を切った後、少量のバター、食塩、調味料などで味付けをします。

バタピーで不思議なのは、落花生の種皮をどうやって取るのということですが、熱湯に数分漬けた後、急速に冷やし、刃で種皮に切れ目を入れて、ローラーにかけて種皮を取り除きます。

贈答品には粒の大きなものの方が見栄えは良いですが、実際食べてみると中実と呼ばれる小粒のものの方が甘味があっておいしいのです。最近は中国で加工された製品の輸入が増加しています。


ピーナッツバター

アメリカでは非常に多く消費されており、日本でもパン食の普及とともに利用されるようになりました。煎った豆の種皮をとり、チョッパーにかけた後ロールで磨砕します。食塩を1〜2%加えますが、さらにバター、砂糖やクリーミングパウダーを加えたものもあります。


甘菓子

煎った落花生のまわりに砂糖をからめるというのは、昔から農家でも行われていました。最近、販売店でみるのは、小麦粉などを使って落花生の豆のまわりに様々な味付け(色付け)がなされています。

チーズ、抹茶、カカオ、味噌をはじめ、多種多様な味を付けたものが並んでおり、小袋のものが多く、いろいろな組み合わせで贈答品に喜ばれています。また落花生の甘納豆や莢ごと蜂蜜出に混んだものも売られています。


ゆで落花生

一口にゆで落花生といっても、どのような落花生をゆでるかで、意味は全く違ってしまいます。堀たての落花生を莢ごとゆでるもの、乾燥させた莢を水でもどした後にゆでるもの、そして乾燥した豆をもどしてゆでるものと、ゆで落花生にもいろいろなものがあります。

普通ゆで落花生というと、堀たての落花生を塩ゆでにしたもので、落花生独特の風味を持ちますが、日持ちが極めて悪いために、落花生産地の農家などに限られた食べ方でありました。しかし、現在では冷凍して貯蔵・流通させることが一般化したため、各地で通年食べられるようになりました。ただ、収穫期の秋にゆでて、販売するまでの期間を冷凍状態で貯蔵・流通させるための経費は大きく、小売価格は必ずしも安くありません。

この点からすると、一度乾燥させた莢、または豆をゆでる方が経費は少なくて済みますが、堀たての味とは別物で、むしろ煮豆のような食感で、実際に販売されているものは、醤油味などの味付けがされているものがあります。

最近、ゆでて冷凍するものに代わって、生莢を直接レトルト加工する技術の開発が行われました。レトルト処理されたものは、常温での流通が可能であるため、従来の冷凍されたものと比べて取り扱いが容易で、流通コストも低減されるため、今後の発展が期待されます。